哲学の木

美瑛

先日、東川町にちょっとした用事があって出掛けた際、井上さんが「まだ美瑛に行った事がない」との事で、ついでに立ち寄りました。
(東川町から車で30分くらい)

個人的な意見ですが、「美瑛に行った事がない人は、北海道に行った事がないのと同じ」と思っています。

北海道の観光シーズンは過ぎている上に雨が降っていて、さらに寒いのが加わり、井上さんは「ああ、天気が良ければ綺麗なんだろうな。うーさむさむ・・・」と一応は納得(?)した様子。

セブンスターの木
美瑛

ケンとメリーの木
美瑛

親子の木
美瑛

四季彩の丘
美瑛

(その他の美瑛の写真はこちらをご覧ください)

もう20年来、訪れている美瑛。
ここに来るたびに、私は「哲学の木」を思い出します。

広大な畑の中に、ぽつんと立つ1本のポプラの木。
少し傾いて立つその姿が「何かを考えている、物思いに耽っている」ように見える事から、誰が名付けたのか、いつしか「哲学の木」と呼ばれるようになりました。

しかし、2016年にその木は畑の持ち主によって切り倒される事になります。
北海道内でも屈指の人気を誇る美瑛において、その象徴とも言える哲学の木が切り倒されると言うセンセーショナルな出来事は、国内外の多くの美瑛ファンに衝撃を与えました。

理由は2つ。

・木がかなり弱っていて、倒れそうだった。
・写真を撮るために、畑に無断で侵入する人が後を絶たなかった。

近年、美瑛は相次ぐマナー違反の観光客による「観光公害」に頭を悩ませています。
美瑛は確かに観光地ですが、ほとんどが「私有地」であり、我々が「おお!?スゲー!」と言いながらパシャパシャ写真を撮っている風景は、農家の人達が畑仕事をしている日常風景なのです。

想像してください。
自分の畑の中に無断で侵入され、好き勝手に写真を撮られる・・・
それは毎日毎日、朝から晩まで自分の家の中に大勢の人達が入れ替わり立ち代り上がり込んで来るのと同じ事。

畑の持ち主にとって、これほどの苦痛があるでしょうか。

しかも、農作物にとって有害となる害虫や病原菌が観光客の靴に付着している可能性もあります。
たったの一度、一瞬だけ立ち寄った観光客のせいで農作物が全滅する・・・これは実際に起きている事なのです。

その可能性を考えた事がある人は、はたしてどれくらいいるでしょうか。
美しい景色を自分達が壊している事に、なぜ気付かないのでしょうか。

こうしたマナー違反は、携帯電話にカメラ機能が付いてから急増したと感じています。
そして、TwitterやInstagramなどのSNSが拍車をかけ、「人と違う写真を撮りたい」言う欲求と欲望が理性や倫理観を凌駕してしまった・・・

哲学の木が立っていた畑の持ち主は、最初は誇らしい気持ちもあったと思います。
しかし、有名になればなるほど、自分の首を絞める・・・

止むに止まれぬ決断だった事は想像に難くありません。

今はただ、在りし日の哲学の木に思いを馳せるのみ。

誰かが名付けた「哲学の木」は、その姿を失い、本当の意味で哲学的な存在になってしまったのは、何とも皮肉な話です。
第2、第3の哲学の木が生まれない事を、切に願うばかりです。

(当HPには哲学の木の写真は一切掲載していません)

富樫




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